過去作品4

「見つけたぞ欠片の勇者!貴様の持つ時空のかけらを…」
「落ちろ!いかづち!!」
今日も俺は、いつも通り時空のかけらを狙う雑魚魔族を返り討ちにしながら旅をしている。
「ほんっとに面倒だな……脅迫する手間がねえから盗賊よりは楽だが」
「勇者が脅迫なんて、物騒な世の中になったもんだ…」
盗賊以上に面倒な奴が来やがった。
「またおまえか…勇者が片っ端から始末する訳にいかねえだろ。脅して口止めするしか…」
「オイラのことは消す気満々だったくせに~」
「だっておまえどっちみちしぶといから問題ないだろ」
「堕天使は丈夫だけど限度があるだろ!」
「丈夫なら良かったじゃねえか。それじゃあ楽しく長生きしろよ、堕天使さん」
しれっとこの場を立ち去ろうとしたが、すかさず堕天使のガキは声を上げた。
「コラ待て!オイラは天使に戻りたいって言ってるだろー!!神界へ帰りたいんだ!!」
「だからって時空のかけらを使うことねえだろ?神に土下座でもして天使に戻してもらえよ」
「無理無理!オイラには羽根が無いから神界に行けないもん!神様にあえねーの!」
「ああおまえ、神に羽根もがれたんだっけ?」
「それが堕天だからな!めちゃくちゃ痛かった~!!」
「そんな痛い思いしたのに帰りたいのか?変わってんなおまえ」
「しょうがねえじゃん、オイラの居場所はあそこしか無いんだよ…」
「あ、宮殿から連絡だ」
欠片の勇者が常に持っていなければならない時空のかけらには特殊な魔力が込められている。
その魔力によって時空宮殿との連絡が可能だ……つまり宮殿に監視されてるようなもんだった。
「なあ頼む!!時空のかけらを譲ってくれよぉ!もうオイラ泣くからな!?うわーん!!」
『こちらは時空宮殿です。元気そうですねグランド…時空のかけらを護る旅に、問題は無いですか?』
「普通に問題だらけっす」
「ってオイラの泣き落し作戦ちゃんと聞けよー!!」
『そちらは例の堕天使ですね?』
「適当に撒いても痛めつけても、懲りずに現れるんすよ」
『ならば始末すればよいのでは?』
「コイツめちゃくちゃ丈夫なんですよ」
『ですから本気で息の根を止めなさい、確実に』
「うへぇ!勇者サイドの連中がする会話とは思えないんだけど!?」
コイツのことは一応宮殿に報告はしていたが、予想通りこうなったか。
『グランド、あなたなら簡単でしょう?』
「そりゃ簡単っすよ、しかしコイツは堕天したとはいえ元神界の住民だ。ヘタに手を下すと厄介なことになりかねない」
『いいえ、心配いりませんよ。こちらで揉み消しますから』
「あんたらほとんど悪役だよ!!」
「揉み消したところで神の法に触れる事に変わらないじゃねえか」
「そうだろそうだろ!!神様激おこになるよ!?」
『ではこうしましょう。グランド、その堕天使を始末しないのなら今月のお給料は無しにします』
「あ、わかりました。今すぐやります」
勇者らしからぬ発言だが、あいにく欠片の勇者は給料制だ。
「はあぁぁ!!?オイラの命はたった一ヶ月の給料よりも安いのかよ!?」
「つまりそういう事だな」
「そんなの納得いかー」
「朽ちろ、心臓」
「ぐがっっ!!?」
『さすが、早いですね』
「ふ、ざけんなよぉ……ちくしょぅっ…」
「給料分は働いたんで、これでいいんすよね?」
『ええ、いつものように使いの者が行きますからね……では私はこれで』
「なーーんちゃって!!心臓一個やったくらいじゃこのアージェント様はくたばらねーぞ!」
「はいじゃあお疲れ様」
「くっらえぇぇ!!!堕天使キィィック!!」
「うるせえなぁっ!!!話終わるまでまだ寝てろバカ!!」
「いってぇ!!?」
大人しくしてりゃいいのに飛び蹴りかましやがって…。
『やはりまだ生きていましたか』
「ちっ、バレたか」
『グランド…あなたは時空のかけらを奪おうとする者に情けをかけるのですか?』
「神にまで目をつけられるのはごめんなんでね……けど今月の給料は貰いてぇし、ならコイツにくたばったフリをさせようかと」
「だから勇者が吐く台詞じゃねえんだよソレ!!」
『わかりました、あなたなりに考えがあるのならそれでもかまいません。…堕天使アージェントよ、今日は見逃しましょう』
「えっらそうに……覚えてろよ!オイラが天使に戻ったらアンタらまとめて握り潰してやるからなぁぁぁ!!!」
…それこそ天使が吐く台詞じゃないだろうが。